French Cuisine / Overview

フランス料理の見取り図

GEOGRAPHY / CLIMATE / HISTORY / REGION

フランス料理は、ひとつの様式ではない。 それは、北の酪農、海辺の魚介、山岳地帯の保存食、南のオリーヴオイルと香草といった、 土地ごとの条件の違いから生まれた複数の食文化の総体である。 まずはその前提として、フランスという国土の広がり、気候の多様性、そして地方という単位の重みから見ていきたい。

六角形の国土が生む、多層の食文化

フランスは、ピレネー山脈、アルプス、中央山塊を抱え、さらに大西洋、英仏海峡、北海、地中海に面した国である。 北から南へ、海から山へ、平野から高地へと環境が大きく変わるため、食文化もまた一様ではない。 地域ごとに手に入る食材、保存の知恵、油脂の使い方、酒との結びつきが異なり、それぞれが地方料理として定着してきた。

つまり、フランス料理とは“中央”が生んだ料理ではなく、まずは各地で育まれた料理の集積である。 パリはその集積地であり編集地ではあるが、起点はあくまで地方にある。

95 県(コルシカ島を含む)
22 地方(旧 région 区分)
34 旧体制下の州区分
55万 総面積(km²)
このページの立場: フランス料理を「名物料理の一覧」としてではなく、 地域の差異がどのように食へ現れるかを読むための入口として位置づける。

気候の違いは、そのまま料理の違いになる

フランスの地方料理を読むうえで、気候は欠かせない。 どの油を使うのか、何を保存食にするのか、何が日常的に採れるのか。 その差は、まさに気候と風土によって決まってくる。

地中海性気候

プロヴァンスやルーションに見られる気候。冬は温暖で、夏は高温・乾燥。 オリーヴオイル、トマト、香草など、光の強さと結びついた料理文化が育つ。

海洋性気候

ブルターニュやノルマンディー内陸部に多い気候。 雨と湿度に支えられた牧草地、魚介、乳製品の文化が豊かで、海の影響も濃い。

大陸性気候

北東フランスに見られる、暑い夏と寒い冬の振れ幅が大きい気候。 保存、発酵、加工の知恵が食の骨格をつくり、肉や加工品の存在感が強まる。

山岳性気候

アルプス、ピレネー、中央高地などの高地に見られる気候。 冬が長く厳しいため、チーズやシャルキュトリーなど、保存を前提とした食文化が発達する。

フランス料理の多様さは、レストランの多さからではなく、 まずは国土の複雑さから生まれている。

地方料理を読むなら、行政区分よりも風土の単位が重要になる

16〜17世紀にかけて、フランスはイタリア・ルネサンスの影響を受けながら文化的な成熟を進めると同時に、 王権のもとで中央集権化を強めていった。革命後には行政区分も再編され、現在の県や地方の制度へとつながっていく。

しかし、地方料理を考えるうえでは、行政の境界線だけでは十分ではない。 なぜなら食文化は、制度よりもむしろ、長い時間をかけて形成された気候・交易・宗教・農業・生活習慣のまとまりによって育まれてきたからである。 その意味で、旧体制下の州区分や歴史的地域の感覚のほうが、料理の個性をとらえやすい場面が多い。

Step 01

風土が食材を決める

乳製品、魚介、香草、豆、肉、山の保存食。まず何が採れるのかが違う。

Step 02

歴史が技法を定着させる

王権、交易、移住、戦争、宗教。歴史の蓄積が、食べ方や調理法を地域ごとに固めていく。

Step 03

都市が再編集する

地方で育った料理は、やがてパリのような都市に集まり、レストラン文化として再編成される。

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