光は、
景色に溶けていく。
ABUKU Europe Journey
ガラスは光を透過する。釉は光を定着させる。水は光を反射する。
そして人は、その光によって景色を記憶する。
ひとつのVaseがヨーロッパ各地を旅した。光を受け取り、景色と呼応しながら、その土地ごとの感覚を映し出していく。これは、その静かな旅の記録である。
これは作品紹介ではなく、光を読むためのフィールドノートである。
Light Cities of Europe は、ガラス・クリスタル・釉・反射を通じて、 「光が都市をどう変えるのか」を読み解く試みである。 しかし都市を見るだけでは足りなかった。光は建築だけでなく、器にも宿る。
ABUKU as Lens
この旅でVaseは、単なる被写体ではない。 その場所の光を受け取り、景色の質を浮かび上がらせるためのレンズである。
From Object to Atmosphere
透明なガラスの中に霞のような白を含む器。 それがヨーロッパ各地の光を受けたとき、何が立ち上がるのかを記録する。
光を反射するのではなく、受け止める白。
ヨーロッパの光は強い。 一方で、ABUKUが持つ白は、輪郭を消し、静けさを生む。 霧のような白。和紙越しの光。曇天の湿度。水墨のにじみ。 その白は景色を遮るのではなく、景色を深く感じるための余白になる。
光を閉じ込める白。
この旅に同行するVaseは、透明なガラスではない。白いガラスでもない。 透明と白のあいだにある、霞のような光。 ABUKUはそれを Opalescent Glass と呼ぶ。
オパールは、鉱物の中でも珍しく、光を閉じ込めている石である。 内部の微細なシリカ球に光が当たることで、青、緑、黄、赤、紫が揺らぐ。
霞みのような白の合間に射し込む光が、青や緑になり、輝く黄になり、琥珀色になり、赤や紫へと移ろっていく。 その揺らぎは、ABUKUのVaseが宿す白とどこか重なる。
光を遮るための白ではなく、光を内部に滲ませるための白。 見る角度によって異なる表情を見せる、光を宿す素材。
“光を宿す白とは何か”を
確かめに行く旅である。
Venice / Murano
ムラーノガラスには、Opalino と呼ばれる技法がある。 透明ではなく、不透明でもない、乳白色で霞んだガラス。 19世紀の職人たちは、オパールのような光をガラスで再現しようとしていた。
Vietri / Glaze
ヴィエトリは、土、火、鉱物、釉薬の世界である。 オパールもまた、シリカ、水、地熱、長い時間から生まれる。 ガラス、釉、鉱物は、光を受け止める表面の物語としてつながっている。
Thermal Cities
オパールは、地下水が長い年月をかけてシリカを堆積させることで生まれる。 Vichy、Baden、Budapest、Ischia。 温泉都市もまた、水が時間を作り、土地と身体を変えてきた場所である。
ヨーロッパ各地の光を集めた地図になる。
7つの光、7つの感覚。
旅の途中で出会った光は、器の中で少しずつ姿を変えていった。
静寂、呼吸、余白、記憶、継承、回復、再生。
それは色ではなく、光が感覚へと変わる過程の記録である。
そして旅の終わりに、それらは再びひとつになる。
光が景色に溶けた場所。
静寂 Sardinia
透明な海は、青く見えるのではない。静かに見える。Vaseは色ではなく、静寂を宿した。
呼吸 Paris / Petite Ceinture
都市に戻った植物。廃線に生まれた余白。呼吸する都市の中で、ガラスは風景に溶けた。
余白 Ateliers Louis Vuitton
創造の前には、必ず余白がある。工房の窓から入る光は、可能性を照らしていた。
記憶 Pompeii
火は都市を消した。しかし同時に、都市を保存した。灰の中で、時間は止まっていた。
継承 Vietri sul Mare
土は焼かれ、釉によって光を纏う。海の青は、器の中に定着する。Vietri は、光を保存する町だった。
回復 Baden / Budapest
地中の熱。立ち上る湯気。人は古代から、水によって回復してきた。
再生 Paris / Bastille Day
革命記念日の夜。火は破壊だけではない。新しい都市を生み出す力でもある。
そして、白へ。 OPALESCENT / Saint-Ouen
静寂
呼吸
余白
記憶
継承
回復
再生
旅の途中で出会った7つの光は、
色の名前ではなかった。
その土地でVaseが受け取った感覚の名前だった。
そして最後に残るもの。
それは青でも、緑でも、赤でもない。
すべての光が重なったあとに現れる、
ひとつの白。
OPALESCENT
透明でもなく、
不透明でもない。
光を反射するのではなく、
内部に滲ませる白。
旅の終わりにVaseは、
サントゥアンの骨董市で出会う古いガラスや乳白色の器の中に、
その記憶を見る。
7つの光は、
ひとつの白へ還っていく。
そしてその白は、
再び光を宿す。
光の都市史へ戻る。
この旅は、ABUKUの記録であると同時に、Light Cities of Europe の実地観察でもある。 光は場所によって、ガラスとなり、釉となり、建築となり、湯気となり、記憶となる。
ABUKUの旅へ。
このフィールドノートの先には、器が出会った光と景色の記録がある。 実際の旅の様子は、ABUKU Europe Journey にまとめている。
